ベトナム福祉視察旅行報告書
今回の主な訪問地は5か所。老人施設などの環境は、タイやフィリピンなどの他アジア諸国に比べてもさらに劣悪で、まだまだこれからといった感じである。それぞれの施設について簡単にまとめてみた。
1.盲目の孤児院
大乗仏教のお寺の住職が境内を使ってはじめた施設。
1995年3月の設立で、現在目が悪い孤児または田舎の貧民の子28人が住み込みで、教育も受けている。年齢は18カ月〜22歳まで。子どもたちの経費予算は1カ月250,000ドンだが、最近は予算切りつめのため3食とも菜食のみ。子どもたちは肉を食べたいと訴えていた。子どもたちの住環境は悪く、暗く窓のない部屋に二段ベッドをずらりと並べていた。ベッド以外に自分の部屋がないのは、日本の特養に似ている。ただ繊細な若い娘たちにはふさわしくない。午前中は音楽の授業、午後は文化の勉強をしている。ヘルパーは6人おり、朝6時から夜
10時までの労働で、全員無給のボランティア。うち5人はこの施設に同居、食事支給。施設の経費は、寺子たちの寄附で賄っている。住職の方針で、独立性を保つため、政府や自治体への援助の依頼はしていない。子ども達が成人したあと、ここを出てからの仕事場として、現在農場を作る計画があり、土地を探しているとのこと。
私立小学校部門には、小学校
4年までに近所の貧しい子ども80人が通ってきている。2.ヒー・ヴォング障害児学校
盲目の孤児院に比べるとかなり裕福な感じがする。校長室には冷房も入っている。建物は寄附で作り、維持費も寄附に頼っている。教員の給料は政府が払っている。
4歳から22歳までの子どもがおり、職業訓練も受けている。日本の東北福祉大学と京都精華大学との交流、寄附がある。3.大老人ホーム
1977
年設立の男性専用老人ホームとしてスタートし、行き場のない障害者も受け入れるようになり、95年からは女性も入ってきた。収容530人という大きな老人ホーム。ヘルパーは
18人で、老人たちのうち100人はヘルパーも兼ねている。頻繁にはトイレへ連れていけないので、ベッドに排泄用の穴をあけている。1室100人と120人で、新しい女性部門は1室20人。家と家族のない人や、ホーチミン病院から回された孤独老人、生活困窮者だけが入居できる。政府からの補助は毎月13kgの米と1人あたり1カ月120,000ドン(約1,600円)のみ。経費として食費が1人1日5,000ドンかかる。足りない分は一般の寄附で補うが、それも足りず、現在はブランチと夕食だけの1日2食にしている。娯楽はほとんどなく、入居者はやることがなく、部屋や外にたむろしているだけ。施設というより、収容所と呼んだほうがいいように見える。精神病を病む老人が多いというが、この環境で精神病はさらに悪化するだろう。痴呆かもしれないが病気を見つけていないのかもしれない。ベトナムでは、福祉施設の視察は慰問・寄附のためと考えられている。視察する側が入っていくと、ベッドに座って寄附を待っている。ヘルパーからも一人一人に寄附するように言われたが、
500人に渡す寄附はなく不公平になるという理由で施設長にまとめて渡した。4.小老人ホーム
小乗仏教の尼寺の境内にある老人ホーム。
2つの部屋に60歳から92歳に孤独老人13人が入居している。窓がない部屋で、床をネズミが走っているなど、住環境は悪い。市の福祉局から毎月1人あたり50,000ドンの補助金が出ている。少し小遣いとして渡している。食事は3度あるが菜食のみ。物乞いにいく人はいない。5.児童養護施設
以前に路上で宝くじ売り、空き瓶拾いなどをして暮らしていた子どもたち、田舎の極貧の家の子どもたちが入居して、学校に通っている。建物は新潟ボランティア協会が
250万円寄附して建設、フランス人が内装費を負担、在ベトナム・ニュージーランド協会が毎年$6,000の食費を寄附、あとはホーチミン市福祉ボランティア協会が寄附している。小学校2年から高校1年の子ども21人がいる。ヘルパーは専従が1人。あとはボランティア。ここにいる子どもたちは、かなり恵まれていると思われる。毎年新潟ボランティ協会から慰問・寄附にきている。以上
添乗員
深井 聰夫 記